将来をしっかりイメージした、ブレないキャリア形成【オルガノ株式会社/右田 和也氏】

オルガノ株式会社 エンジニアリング本部技術部 電力ビジネスユニット 主任 右田 和也 氏
工学研究科 機械工学専攻 卒業
1.専攻を生かせる仕事を就活の軸に
― 学生時代の研究について聞かせてください。
右田氏:
「工学部の機械工学科で流体工学を専攻していました。産業分野で身近なところですと発電用のタービンや自動車のターボチャージャなど羽根車を持つ回転機械の内部流動をシミュレーションしていました。大学院でもそのまま同じ研究を続けました。」
― なぜその分野を選んだのですか?
右田氏:
「学部を選ぶときに、将来的に目に見える形のあるものに携わりたいという思いがありました。得意な科目が理系科目だったということもあり、工学部から産業分野に進めたらいいなという思いから選びました。」
― 就職活動のお話を聞かせてください。
右田氏:
「専門を生かした分野に進みたいと思いインフラ系、特に発電所に関わる仕事を軸に考えました。具体的には電力会社や重電メーカーを中心に就職活動を進めました。」
2.業界研究で見出すBtoBの優良企業
― BtoBであるオルガノ社は学生や一般消費者には一般的に馴染みが薄いですが、どのように知ったのですか?
右田氏:
「電力業界を中心に業界研究をする中で、発電所全体の系統図が出てくると、水処理設備の納入メーカーとしてよくオルガノの名前が出て来ていました。そこで興味を持ち調べていったところ、オルガノが高い技術力を持ち、その分野で高いシェアを持つ会社だということを知りエントリーしました。」
― 企業研究をした時のオルガノ社の印象を聞かせてください。
右田氏:
「とにかく発電所の水処理設備ではトップの会社、という印象が強かったです。ただ正直に申しますと、具体的にどのような業務をしているのかというイメージを掴むのに苦労しました。このことはオルガノに限らず、エンジニアリングの会社全般に言えました。」
― どのようにして業務のイメージを明確化させていったのですか?
右田氏:
「オルガノだけではなく、他のエンジニアリング会社のことも調べていく中で次第に明確になっていきました。大規模なプラント建設に携わっている会社の説明会などに参加し、どのような仕事をしているのかを調べながら自分でイメージを固めました。具体的なキーワードとしては設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)です。エンジニアリング会社の業務は大別するとEPCと呼ばれるこの三つのフェイズに分かれており、それは各社一緒だということがわかってからイメージが湧くようになりました。」
3.一つのプラントに5年かかることも
― 現在の業務についてお聞かせください。
右田氏:
「私の所属はエンジニアリング本部技術部電力ビジネスユニットです。こちらのグループは電力会社や重電メーカーなど、発電プラントに関わる企業がお客様です。
その中で私が担当しているのが設計業務です。火力発電所や原子力発電所で使われる純水を作る装置や廃水を浄化する装置の機械設計を担当しています。」
― プラント建設の流れについて教えてください。
右田氏:
「まず仕事を受注するところから始まります。営業部門がお客様のニーズを聞き出して、それに基づき計画部門が装置のシステムや予算を計画します。大きなプロジェクトでは、計画部門だけで細かい予算や仕様をすべて詰めることはできないため、私たち設計部門と連携しながら計画を進めていきます。そうしてオルガノが仕事を受注することができたら、今度は設計部門が中心になってプロジェクトを進行していきます。まず設計部門がシステムの詳細や運転工程を設計・検討し、それに基づいて設備が稼動するよう制御部門が計器選定やプログラミング等の電気計装設計を行ないます。その後、工事部門が建設現場での監督業務を担い、試運転部門が運用に向けたプラントの立上げ、最終点検を行うという流れになっています。私が担当している電力事業ですと一つのプロジェクトで2-5年かかります。」
― プロジェクトはどのようなチームで行われるのですか?
右田氏:
「オルガノでは営業、計画、設計、制御、工事、試運転の各部門で担当者が決められプロジェクトを進めていきます。よほど大きなプロジェクトでない限り、設計担当者は一人です。一人といっても、各部門つねに上長がサポート・チェックする体制が出来上がっています。」
4.プロジェクトの中心としての設計部門
― プロジェクトの中での設計部門の業務について教えてください。
右田氏:
「まずはお客様の要求仕様に対してどのようなシステムが最適かを検討します。システムが決まった後は、タンクやポンプなどプラントを構成する機器の仕様を決定します。例えば、タンクの容量やポンプの材質・揚程がシステム上で問題が起こらないか確認し、要求仕様を満足するように選定します。仕様が決まるとメーカーへ手配を行うための仕様書を作成します。」
― 日常的にはどのような作業を行うのでしょうか?
右田氏:
「理系出身のエンジニアで設計部門というと、日々CADに向かって図面を引いているというイメージがあるかも知れませんが、実は必ずしもCADが使えなくても構いません。もちろん使えるに越したことはありませんが、実際の図面は専門の協力会社などに依頼し作業してもらいます。むしろ中核となるのは設計検討業務です。たとえばあるタンクがどれくらいの圧力まで耐えられるのか、決められた圧力に対して板厚はどれくらい必要か、フランジ部分は何ミリにすれば強度上問題がないのかなどという仕様を決定する技術検討のことです。これはエンジニアリングの根本的な部分でミスが許されません。
それに加えて大きい部分を占めるのが調整業務です。メーカーに修正を依頼した図面が上がってこない場合にフォローしたり、お客様の事情とスケジュールに合わせて打合せの段取りを組んだりするという業務です。」
5.大切なのは確かな技術力とお客様からの信頼
― 設計者にはどのような能力が要求されるのでしょうか?
右田氏:
「オルガノの設計者は色々な方と会い、話をするので、そういうことを前向きにとらえて楽しめる人がいいと思います。」
― 設計者・エンジニアというと一日中パソコンとにらめっこしているという印象を持っている人もいるかと思いますが、そんなことはないのですか?
右田氏:
「先ほどもお話をしたとおり、オルガノが受注するプラントでは、受注後の窓口は設計部門が中心になります。技術的な問合せや回答は、営業部門を介さず、直接設計者が話を伺った方が早く正確に回答できます。また社内においても制御、工事、試運転の担当と連携を取る必要があるので、本当に色々な人と接点がある仕事です。」
― ということはコミュニケーション能力も要求されるということでしょうか?
右田氏:
「そういう側面もあります。ただコミュニケーション能力だけでは絶対に駄目です。プラント設計業務の中で、設計者はオルガノの代表としてお客様に会います。その中で、一番大切なのは確かな技術力に裏打ちされた信頼できる発言です。口数が少なくても、お客様から技術者として信頼される方が大切だと私は思います。」
6.新人を育て上げるアドバイザー制度
― 設計者はオルガノ社の代表としてお客様のところに行くということですが、一本立ちするまでどれくらいの期間がかかりましたか?
右田氏:
「オルガノではアドバイザー制度というものがあり、最初の一年は入社3-8年程度の先輩社員が一人付いてしっかりと教育してくれます。いきなり一人でお客様に話をしなければいけないということはありません。アドバイザーのサポートを受けながら徐々に一本立ちしていきます。」
7.目標を定めたキャリア形成
― 右田さんご自身は今後どのようなキャリア形成をしたいと思っていますか?
右田氏:
「私は幸い自分が希望した発電所向け水処理プラントの設計という配属になりましたが、設計だけをやっていると見えない部分が出て来るというのも事実です。単に設計上問題がなければいいということだけでなく、現場の工事部門の視点では施工性や工事の進めやすさがとても大切ですし、試運転の立場からすれば調整のしやすさ、制御の人からすると設計のシンプルさが大切になるといったことがあります。一度設計以外の関連部署も体験してみたいと思っています。」
― それは設計者としての自らを高めるためですか?
右田氏:
「仰る通りです。このまま電力事業の設計者としてキャリアを進んでいきたいのですが、そのために他部署も経験したいということです。」
― 中には配属が希望通りでなかったとか、働いているうちに違うことにチャレンジしたくなる方もいると思いますが、そうした場合も異動は可能なのですか?
右田氏:
「半年に一度上長との面接があります。そこでは業務上の目標に対する結果について話し合いますが、そこで今後のキャリアについて相談もできます。」
8.比重の高まる海外ビジネス
― その他、右田さんが高めたいと思っている能力はありますか?
右田氏:
「語学を中心に海外展開するお客様への対応力を高めたいと思っています。国内マーケットが成熟してきている一方、東南アジアでは電力が不足しており、多くのプラント建設案件があります。日本の発電プラントメーカーが案件の受注を目指していますので、必然的にオルガノの海外事業も増えるはずです。」
9.やりたいことのイメージを大切に!
― 就職活動中の学生に何かアドバイスはありますか?
右田氏:
「まず何よりも大事なのは心身の健康です。これはすべてのベースになるところです。また、就活はこれから自分が頑張っていく仕事を決めていくものなので、前向きな気持ちで就活に取組んでほしいと思います。」
― 厳しい就職活動の中、後ろ向きになる局面もあると思いますが、その場合はどうすればいいのでしょうか?
右田氏:
「皆さんどの会社に入りたいかで悩みますが、それと同じくらい会社でどうやって働きたいかということも考えると良いと思います。気持ちを会社の入口だけに捉われず、会社で働く姿に置くことによって、視野が広がり前向きに取り組むきっかけになるのではないかと思います。」
― 他に何かアドバイスはありますか?
右田氏:
「就活生の周りにはたくさんの情報が溢れていますが、その選択能力が問われます。エントリーしようとするとき、「この仕事興味あるな、ないな」という心の声を大事にして欲しいと思います。理系の学生であれば、研究を軸に将来やりたいことのイメージがおぼろげでもあるのではないかと思います。そのイメージを何よりも大切にすべきではないかと思っています。イメージと、働く姿とのすり合わせに一番時間を割くくらいでいいと思います。それがしっかりできれば周りの声に惑わされないで積極的に就活ができ、自然と自分に必要な情報を選択できるようになると思います。」
― 最後にメッセージはありますか?
右田氏:
「仕事を通じて多くの方から感謝されます。お客様から感謝の言葉を頂くこともありますし、現場の人から感謝されることもあります。プラントは期間の長い仕事なので途中辛いこともありますし、時には失敗や間違いの修正対応に追われることもあります。しかし仕事を最後まできちんとやり切って感謝されると本当に頑張って良かったなぁと思えてきます。そのようなやりがいのある仕事を皆さんと一緒にできたらいいなと思います。」
― ありがとうございました。(了)
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